数理物理研究所

2026-09-22

CFD解析はメッシュを細かくすれば精度が上がるとは限らない

CFD解析はメッシュを細かくすれば精度が上がるとは限らない

「メッシュを細かくすれば精度が上がる」という思い込み

CFD(数値流体力学)解析において、計算結果の精度に不安があるとき、多くの現場では「メッシュ(計算格子)を細かくする」ことが第一の対策として選ばれます。実際、多くの場合はそれで精度が改善します。しかし、この前提が常に成り立つとは限りません。

実際に起きたこと:メッシュを8倍細かくしても誤差が縮まらなかった

円管内の層流(レイノルズ数10程度、理論解が既知のケース)をOpenFOAMで解析した際、まず自由四面体メッシュ(形状に自動で適応する、扱いやすいメッシュ生成方式)を用いました。約29,000要素のメッシュで解いたところ、流速の誤差は理論解に対して0.5%程度と良好だった一方、**圧力損失の誤差は17.5%**にとどまりました。

そこで要素数を約223,000(8倍)まで増やして再計算しましたが、流速の誤差はさらに改善したにもかかわらず、圧力損失の誤差はむしろ19.5%へと悪化しました。通常、メッシュを細かくすれば誤差は縮まっていくはずです。この「細かくしても直らない、むしろ悪化する」という挙動は、単純な解像度不足とは異なる原因を疑うべきサインでした。

原因:メッシュの「かたち」の悪さ

メッシュの品質を検査したところ、非直交性(隣り合う計算格子のつながり方の歪み)が、要素を細かくしても改善しない、あるいはむしろ悪化することが分かりました。これは四面体という要素の形状そのものに起因する性質で、単純な細分化では解消しません。有限体積法による圧力の計算は、流速に比べてこの格子の歪みに敏感であるため、圧力誤差だけが目立って悪化していたのです。

対策:構造化メッシュへの転換

そこで、円管の断面を「中心の正方形+周囲4つの扇形」に分割する、格子が規則正しく並ぶ構造化メッシュに切り替えました。同じ条件で解析し直したところ、非直交性の指標が大きく改善し、圧力損失の誤差は2.3%まで縮小しました。自由メッシュの場合に比べて、誤差はおよそ8分の1です。

検証を欠かさない、という姿勢

この事例が示しているのは、「メッシュを細かくする」という直感的な対策が、常に正しいとは限らないということです。むしろ大切なのは、計算結果が理論解や既知の実測値とどれだけ一致しているかを都度確認し、一致しない場合はその原因(今回であればメッシュの形状)まで踏み込んで切り分ける姿勢です。数理物理研究所では、こうした検証のプロセスそのものを解析業務の中核に据えています。

ご相談の流れ

「シミュレーション結果をどこまで信頼していいか分からない」「外部に依頼した解析結果を検証したい」。そうした段階からのご相談も歓迎しています。数理物理研究所では、確かな検証プロセスに基づいた解析結果をご提案します。

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